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皆様はじめまして。
税理士の泉水 和明(せんすい かずあき)と申します。
医療専門の税理士法人に10年以上勤務した後、より身近に皆様のお力になりたいと2024年に独立開業をしました。
このページをご覧になられている方々はドクターの先生、経営者、実務家などが多いかと思われます。そのため、改めて皆様方のお役に立てるよう実務上の重要なポイントをお伝えする機会と設けたいと考え、今回から実務上の重要なポイントとなるテーマの解説を連載していきます。
第1回目は、「診療所開業時に必要な届出(税務編)」です。
これから開業を検討されている先生又は開業されたばかりの先生は、初めてのことばかりで様々な対応を求められていることと思われます。
その中で、診療所を開業したら、診療報酬や自費治療費として得た収入は事業所得となりますので、税務署に届出をする必要があります。そこで今回は個人で開業した場合に必要な税務届出書類について説明していきます。
新たに事業を開始したときの提出する書類です。
【提出期限】開業の日から1ヶ月以内
【提出先】納税地の所轄税務署
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告は、日々の取引を所定の帳簿に記帳し確定申告することで、家族(青色事業専従者)への給与支給や青色申告特別控除(最高65万円)などの様々な税制面でのメリットが受けられる申告方法です。
【提出期限】
開業日が1月1日~1月15日までの場合:3月15日まで
開業日が1月16日以降の場合:開業の日から2ヶ月以内
【提出先】納税地の所轄税務署
提出期限を過ぎてしまいますと、開業日の属する年は青色申告によるメリットを受けられなくなりますので留意が必要です。
「 所得税の青色申告承認申請書 」でも触れましたが、事業主と生計を一にする家族に対して給与を支給する場合は、この届出書を提出する必要があります。この届出書を提出することで、相当であると認められる家族への給与額が必要経費として認められます。
【提出期限】
開業日が1月1日~1月15日までの場合:3月15日まで
開業日が1月16日以降の場合:開業の日から2ヶ月以内
【提出先】納税地の所轄税務署
スタッフや青色専従者などに対して給与を支払う場合に必要となります。
なお、「個人事業の開業届出書」に給与等の支払の状況を記載した場合は、提出不要です。
【提出期限】 開業日から1ヶ月以内
【提出先】給与支払事務所等の所在地の所轄税務署
事業主が、スタッフや青色専従者などに給与を支払う場合、その給与から所得税をあらかじめ源泉徴収し、所轄税務署へ納付しなければなりません。このように事業主が、ある所得から徴収した所得税を源泉所得税といいます。この源泉所得税は、給与を支払った月の翌月10日までに納付しなければなりませんが、この申請書を提出することで、源泉所得税の納付を年2回(1~6月までに支払った所得に対する源泉所得税:7月10日、7~12月までに支払った所得に対する源泉所得税:翌年1月20日)に減らすことができ、事務手続きを軽減することができます。
【条件】給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者
【提出期限】 随時
【提出先】給与支払事務所等の所在地の所轄税務署
納期の特例を適用できるのは、原則として申請書の提出日の翌月からです。例えば、9月に申請書を提出した場合は10月分の給与から適用になるため、9月分の給与から源泉徴収した所得税は通常どおり翌月10月10日に納付する必要があります。そのため、希望する適用開始時期に合わせて、その前月までに事前に申請書を提出する必要がありますので留意してください。
開業前にすでに住所地を納税地として確定申告を行っていた方が、開業後に事業所等の所在地を納税地として確定申告を行いたい場合に提出する書類となります。開業後は税務関連の書類が納税地に届くことが増えると思われますので、その際にご自宅の住所地でなく事業所等の所在地を到着地として希望する場合などに提出するものです。
【提出期限】 随時
【提出先】異動後の納税地の所轄税務署
固定資産を徐々に経費化していくことを減価償却といいます。減価償却の方法は複数ありますが、一般的に用いられる方法に定額法と定率法があります。個人事業主の場合、法定の償却方法は「定額法」となりますので、「定率法」を選定したい場合は、こちらの届出が必要となります。一般的には、定率法の方が、経費になるタイミングが早いため、固定資産取得時の節税面でのメリットが大きいと言われています。ただし、ケースによって異なりますので、検討時には税理士等の専門家に相談されることをお勧めします。
【提出期限】 選定しようとする年分の確定申告書の提出期限まで
【提出先】納税地の所轄税務署
棚卸資産=在庫の評価方法はいくつか種類があり、法定評価方法である「最終仕入原価法」以外の評価方法を選定する場合は、この届出が必要となります。
棚卸資産の評価額は利益の金額に影響するため、どの評価方法を選択するのかは重要です。どの評価方法がご自身の事業にあうのか、税理士等の専門家に相談されることをお勧めします。
【提出期限】 選定しようとする年分の確定申告書の提出期限まで
【提出先】納税地の所轄税務署
ここまで個人開業時に必要な税務に関する届出について説明してきましたが、ここに書いたすべての届出が必要なわけではありません。ご自身のケースでは、どの届出が必要で、どの届出が不要かを確認しましょう。また、提出期限をすぎるとメリットを受けたい年にそのメリットが受けられないこともありますので留意してください。
税金面でのメリット、デメリットについては、様々なケースがありますので、税理士等の専門家に相談されることをお勧めします。
初回相談は無料・全国オンライン対応(関東圏は訪問も可能)です。